池崎由佳

学年 : 一貫制博士課程3年

所属学会: 日本遺伝学会

連絡先:


研究内容

北アメリカ原産の針葉樹ヌマスギを題材に、樹木の集団遺伝学的解析を行っています。

@ヌマスギ(Taxodium distichum)について

ヌマスギは、北アメリカの南東部に広く分布し、ミシシッピ川の沿岸部や、フロリダに点在する沼や池などの湿地帯に生育する針葉樹です。その為、長期間の洪水に耐えることができる一方、テキサスのような乾燥した地域では大規模な干ばつにも耐えるなど、幅広い環境への適応が見られます。
 また、主に流れの早い河川域に生育するbald-cypressと、流れの停滞した沼や池に生育するpond-cypressの2変種の存在が知られています。この2変種は生育域が重なっており、通常であれば互いに交配が生じることで遺伝的な差異がなくなっていくと考えられます。しかし、2変種は葉の形や付き方など、目に見えるはっきりとした違いを保っており、変種間分化を解析する上で非常に興味深い樹木です。


A研究目的と方策

本研究では、ヌマスギの変種間分化と分布域の変遷の歴史について明らかにすること、また、変種間分化や環境への適応に貢献している適応遺伝子を見つけ出すことを目的としています。その為に、現在は次世代シーケンサーを用いて一度に多数個体の多数核遺伝子座(ここでは96個体48遺伝子座)の配列を決定し、変種間・地域間での遺伝的な分化について解析を進めています。


Bこれまでの結果について

これまでの解析結果から、ヌマスギではミシシッピ川沿岸・テキサス州の集団とフロリダの集団との間で地域的な分化が生じていることが示唆されています。また、変種間での分化に貢献していると考えられる候補遺伝子が二つ検出され、これらの遺伝子は寒さや乾燥等の刺激、虫害などに応答することから、環境への適応に関わっている遺伝子ではないかと考えられます。加えて、分化の歴史についての解析から、地域間・変種間の分化がこれまで予測されていたよりも非常に古い時代に生じている(約400万年前)ことが示唆されました。




今後は、これらの解析結果を踏まえ、更に解析に用いる個体数や遺伝子座数を増やし、変種間の分化にどのような機能を持った遺伝子が関与しているのか、解析を進めていく予定です。

業績

なし