生態学I


質問と回答(1月18日):

●今日はわかりやすかったです。

└◇以前はわかりにくかったのね・・・。

●QTLについて、もう少しわかりやすく説明してほしい(2)。

└◇動物の体長、鳥の嘴の幅、花の大きさ、葉の長さなど、生物のほとんどの性質は、連続的に変異するので、「量的形質」と呼ばれる。このような量的形質の大小を決めている遺伝子を、QTL(Quantitative Trait Loci:量的形質の遺伝子座)という。1つの形質にはふつう、たくさんのQTLが関与している。

●マーカー遺伝子がわからなかった(5)。

└◇「1月18日の資料」図14に、解説を書きました。これを参照してください。

●MCとMLはどう違うのですか。

└◇MCは、Mimulus cardinalisというハチドリ媒花の種だけが持っている対立遺伝子(M. cardinalis のマーカー遺伝子)、MLは、Mimulus lewsiiというハナバチ媒花の種だけが持っている対立遺伝子(M. lewisii のマーカー遺伝子)という意味です。

●マーカー遺伝子型と量的形質の関係をもういちど説明してほしいです(8)。

└◇「1月18日の資料」図14に、解説を書きました。まず、これを読んでください。マーカー遺伝子型とは、たとえばABO血液型のようなものです。血液型自体は、量的形質の表現型に何の影響も及ぼしていないと考えられます。しかし、もしABO血液型の遺伝子の近くに、何らかの量的形質の表現型に影響しているQTLがあれば、血液型で分けたグループ間で、形質値の平均値に違いが生じます。

●QTLマッピングのしくみがよくわかりませんでした。QTLマッピング技術をもっとくわしく知りたい。(3)

└◇QTLマッピングは、遺伝子のマッピングに用いる連鎖分析という方法を量的形質に拡張したものです。その解説は、この授業の範囲をこえます。詳しく学びたい人は、下記のサイトを参照してください。

●「表現型分散の分割」のスライドの、全分散=QTL1による・・・というのがわからなかった(2)。

└◇まず、「1月18日の資料」図10を参照して、「分散の分割」について理解してください。ある形質の値(たとえばダーウィンフィンチの嘴高)の分散は、10個のQTLがあれば、それぞれのQTLの変異に由来する分散の和で近似できます。ここでは、10個のQTLの効果が独立であると仮定しています。この仮定は厳密には正しくありませんが、近似的には成立します。

●遺伝的浮動の原理の意味がわかりません(2)。Population sizeとは何ですか?

└◇Population sizeとは、集団の個体数のことです。個体数が小さいと、たまたまある対立遺伝子が、集団全体に広がってしまったり、逆にある遺伝子が集団から消失したりします。授業では、道路をよっぱらいが左右にランダムに歩いている場合を例に説明しました。道幅が狭ければ、よっぱらいは道路のどちらかの端にたどりつきやすくなります。道幅が十分に広ければ、どちらかの端にたどりつくには、長い時間がかかります。これと同様に、集団サイズが小さいと、偶然の作用で、2つの対立遺伝子のうちどちらかだけが集団全体に広がってしまいがちです。これを遺伝的浮動による対立遺伝子の固定といいます。集団が十分に大きければ、このような固定はなかなか起きません。

●遺伝的浮動のシミュレーションとは、具体的にどのような実験を行なっているのですか。

└◇まず、集団サイズNを決めます。対立遺伝子は2種類ある(たとえばAとBがある)状態から始めます。それぞれの初期頻度は、自由に決めることができます。たとえばどちらも同じ頻度(それぞれ0.5)の状態から計算を始めます。対立遺伝子の数は、2Nです。2N個の対立遺伝子から、繰り返しを許して、2個を選びます。選ばれた2個が次世代の遺伝子型になります。この作業をN回繰り返し、次の世代のN個体の遺伝子型を決めます。これで、ある世代から次の世代への計算が終わりです。この計算を、何世代も続けていくと、やがて、AかBのどちらかが、集団全体に広がってしまいます。このような計算を何度も繰り返したのが、「1月18日の資料」図3のシミュレーションの結果です。図3は、N=4とN=40の場合についての、計算結果を示しています。

●劣性の有害突然変異の平衡頻度の説明をもう少し(2)。

└◇「1月11日の資料」図8〜10の説明をよく読んでください。図10の説明に、平衡頻度の求め方を書きました。

●AA'は、どちらが優性・劣性かはわかったのですが、どちらが有利なのかがよくわからない。

└◇優性・劣性と有利・不利は、無関係です。優性対立遺伝子が有利な場合もあれば、劣性対立遺伝子が有利な場合もあります。

●相関係数などの計算

└◇「1月18日の資料」図9を参照してください。相関係数は、相関の大きさをあらわす「共分散」を相対値で表現したものです。「共分散」は平均値とともに増加しますが、相関係数は-1と1の間の値をとります。

●「突然変異はランダムではない」の具体例として、A, T, G, Cを挙げられましたが、イマイチ納得がいかなかったので、もう少し詳しくお願いします。

└◇もし、A, T, G, Cの間の突然変異による変化(塩基置換という)がランダムなら、たとえばAがT, G, Cに突然変異する確率は、どれも同じです。しかし実際には、Aは、T, Cよりも、Gに置換することのほうが多いのです。これは、(A, G)がプリン塩基だからです。プリン塩基からピリミジン塩基への置換は、起きにくいのです。

●自然淘汰理論が循環論という疑問がわからない。循環論ってどういう意味ですか。

└◇ 「循環論法」とは、前提と結論が互いに依存している論証法のことです。たとえば、「神が存在することは、聖書に書かれている。聖書は神の言葉である。故に神は存在する」(広辞苑より)というような論証法です。もっと身近な例をあげれば、「K君はなぜ太っているんだろう?」 「メシをたくさん食べるからだよ」「じゃあ、なぜそんなにたくさん食べるの?」 「太ってるからさ」・・・というような論証法です。このように、前提(たくさん食べる人は太っている)と、結論(太っている人はたくさん食べる)が相互に依存している場合には、結論を前提で先取りしていることになります。これを論点先取の虚偽といいます。自然淘汰について、「自然淘汰に有利であるとは、生涯に残す子孫数が多いということである。自然淘汰に有利な形質を持つ個体が、より多くの子孫を残す結果、有利な形質が、集団中にひろがっていく。」と説明すると、これは循環論法のように聞こえますね。「自然淘汰に有利であるとは、生涯に残す子孫数が多いということである」という前提(定義)が、「有利な形質が、集団中にひろがっていく」という結論を先取りしているように見えます。実際には、自然淘汰の理論は、遺伝子頻度や淘汰係数、優性度に関する初期状態を与えたときに、ある対立遺伝子が世代ごとにどのように変化するかを予測する理論です。淘汰係数の初期状態としては、正(有利)、0(中立)、負(不利)の3つの場合があり、それぞれの場合によって、結論が変わります。したがって、論点先取の虚偽をおかしてはいません。また、「1月11日の資料」図8・9にあるように、対立遺伝子が劣性で、頻度が低く、淘汰係数が小さい場合には、有利であっても(淘汰係数が正であっても)、なかなか増えません。

●西洋人はみんな酒に強いと聞いたのですが、本当ですか。

└◇日本人を含むアジアの人たちの間では、アルデヒド脱水素酵素の欠損型の頻度が高いため、酒に弱い人が多いのです。ヨーロッパでは、欠損型の頻度が低いので、酒に強い傾向があります。このテーマについては、1月27日の私のウェブ日記を参照してください。

●ウェブサイトを(スクリーンに)映したのは、見えにくかった。前方の電気だけでも消していただけると、スクリーンが見やすくていいです(2)。

└◇来年はそうします。今年はごめんなさい。

●問題を取り入れてくれた(授業中に問題を解く時間をとった)のが良かった。

└◇今後も、このやり方をときどき採用しようと思います。

●先生の研究室で他に何をやっているか、教えてください。

└◇研究室のウェブサイト、および私のウェブサイトを参照してください。