外来種対策

世界はどんどん小さくなっている。江戸時代、黒船により日本が開国してからわずか150年の間に交通手段や通信手段が目まぐるしく発達し、国境を越えての移動や世界各地の情報を即座に得ることが難なくできるようになった。今では「遠くの日本より、近くの海外」というフレーズに表されるように気軽に海外旅行に出かける人たちも多い。東京・北京間を片道3時間30分で行き来できるそんな時代だ。その一方で国際化にともない多くの問題を抱えることになった今日であるが、その問題は我々人間だけのものではない。

 

近年、従来日本では見られなかった様々な生物が海を越え私たちの身近に生息するようになった。一見これは、本国に棲息する種の数が増え、生物多様性にとって好ましいものに思えるが、ことはそう単純なものではない。

 

生物はもともと限られた移動・分散能力、地理的な障壁によって分布の拡大を制限されている。そのため、競争力の強い種による弱い種の排除、捕食者による被食者の捕食など一方の種が不利益をこうむるような生物間相互作用はおきにくい。たとえ一方が犠牲を強いられるような生物間相互作用であっても、いずれも在来種で進化の歴史を共有していれば被害をこうむる側が防御機能を適応進化させているなど、何らかの生態的な抵抗手段を持っているため絶滅は起こりにくい。ところが人為的に本来の生息域外に持ち込まれた外来種と在来種の間には進化の歴史を共有していない。そのため外来種に対する防御機能を持たない在来種が絶滅の危機に追いやられる可能性がある。つまり外来種の侵入は一方的に在来種が犠牲になるような生物間相互作用をもたらしやすい。増殖する外来種に対して政府もこの危機に気付き生物多様性国家戦略を立ち上げた。そのなかで問題の3本柱の一つとして外来種対策の重要性を述べている。いまや外来種問題は国民一人一人の問題なのだ。

 

現在九州大学移転予定地では、セイタカアワダチソウ、アメリカザリガニ、といった外来種が特に多く見受けられる。セイタカアワダチソウはキャンパス内ののり面やメダカ池周辺に群生し、乾燥に強く大量の種子をつくるという特性を活かしながら在来種を駆逐し本来の景観を変化させており、アメリカザリガニは新キャンパス内のいたる池で増殖し在来種であるメダカやカスミサンショウウオといった水生生物を捕食している。またアメリカザリガニはその強大なハサミで水草を刈ってしまうのでガマ池の菱なども損害をこうむっている。新キャンパスのできる元岡地区にはスクミリンゴガイやチクゴスズメノヒエなど他にさまざまな外来種が移入しているが、セイタカアワダチソウとアメリカザリガニの繁茂・繁殖が著しく早急に手を打たないと大学移転地の生物多様性に多大な被害が及ぶことが予想されるので今回はこの2種の徹底的管理について考える。

 

以下この2種の駆除について考える。

まずセイタカアワダチソウは種子および地下茎による繁殖力が強く放っておくと短期間に優占種となってしまうので、こまめな管理が必要である。管理方法としては、薬剤による除草は安全性に問題があるため、刈り取りによる駆除がよいと思われる。なお大阪府淀川において刈り取りによるセイタカアワダチソウの駆除を試みた例がある。その2年にわたる実験結果によると年1回の刈り取りでは草丈は低くなるものの優占状態は変わらないが、年2回では草丈の低下が著しくなるとともに優占程度の減少が目立ち、年3回では草丈、優占状態ともに著しく低下し、年4回でその傾向はさらに強くなる。よって年3回以上の刈り取りでセイタカアワダチソウの繁茂を充分抑えこむことが可能で、年2回でも他種の生育が可能となり優先化を阻止できると思われる。しかし、現在セイタカアワダチソウが繁茂している付近では在来種の一年草の生息場所でもあるので慎重な刈り取りが必要である。とくに湿地区域では刈り取りではなく抜き取ることによる駆除が要求される。

 

次にアメリカザリガニの駆除だが、徹底した捕獲による駆除を提案する。本種は個体が比較的大きくワナを使った大量捕獲が可能である。アメリカザリガニの捕獲と同時に池の他の生物の種類と数を調べれば元岡の生物の定期的なデーターがとれる。また池を干して捕獲する方法もあるが乾期や寒冷期には穴を掘って休眠するので捕獲は難しくなる。産卵期もふまえ時期を考えた対策が必要である。

 

目標は生物多様性ゾーンからセイタカアワダチソウとアメリカザリガニを一掃することである。野生化する外来種が急速に増加している現在、むかし当たり前のようにあった本来の風景や環境を取り戻すのは困難なことのように思える。また他の多くの環境問題と同じく、外来種の生態についても対策についても不確定なところが多いのが事実である。しかし、充分に調査が行き届いて確実なことが言えるまで何も手を打たないことは許されない。対策を実施すると同時に調査研究を続行し、予測を行い、また対策を練っていくという姿勢が必要である。九州大学は日本各地の生物多様性の脅威となっているこの2種の外来種への対策を徹底し、日本における外来種対策の先駆けとなるべきである。

 

 

 

セイタカアワダチソウ

北アメリカ北東部原産のキク科の多年生草本。

種子および地下茎の繁殖力が強く、虫媒花であるが、イエバエ、ニクバエ、キンバエといった衛生害虫類、ミツバチ、ハナアブ類などの都市近郊にも棲息できる昆虫が担っているので都市部でも容易に繁殖できる。また乾燥にも強く河川敷や都市の空き地など夏季に水分が極端に低下する場所でも生育可能となる。一度定着すると地下茎によって急激に広がり、2〜3mという高茎によって先住者を駆逐し、完全な優占群落を形成する。他の種が生育できないのはアレロパシー(他感作用)ではなく、光をめぐる競争で優位に立つことによる。

 

 

アメリカザリガニ

アメリカ合衆国南部原産

エラで空気からの直接呼吸もでき、低い溶存酸素にも耐える。短距離ならば陸上の移動も可能である。メスは1繁殖期に1回受精卵を発達した腹脚に付着させ掘った穴などに潜んで孵化後、第二幼生まで保護する。卵径約2mm、200〜1000粒をうむ。産卵は6〜9月に多い。第一幼生(体長4mm)第二幼生(体長6mm)は餌を食べない。体長8mmの幼エビに成長して摂餌をはじめる。1.5〜2年後、赤褐色の体長約6cmに成長し、生殖可能となる。乾期、寒冷期には穴を掘って休眠し、寿命は数年である。

 

 

1LT03055T     酒徳 俊