動物への配慮をしつつ道路を作る

 

                   1TE01073N  岩本 一顕 

1 はじめに

 

 自然にやさしい道作りを考えると、エコロードという言葉に出会う。エコロードとは、生き物の生活や生活環境を大切にした道づくりのことである。現在、私達は都市の歪んだ生態系の中に住んでいる。それは主に、大きなかたまりの緑地の減少、環境汚染による帰化生物の増加と市街地の緑の孤立化によるものである。道路建設による生き物に対する影響はそれぞれの種によって異なるが、その影響を環境保全処置により最小限に抑え(ミティゲーション)、それと 時に道路の敷地を使って自然をより豊かにすることが大切である。自然環境に影響を及ぼさないことが必要であり、普遍種を含めた生態系全体を保全することが望まれている。保全のための手法は地域の状況や対象となる種によって異なるため、その選択や実際の設計を行う際には内容を吟味しなければならない。

九州大学移転地では、近隣に水辺が存在し、山がちである。そのため、周辺に生息するアカネズミ、カメ、タヌキ、アナグマ、ノウサギ、イタチ等の小・中型動物が移動するとき、道路のために通行不可となったり道路上での事故(ロードキル)の発生、また側溝に落ちたりすることが想定される。大学という巨大な建築物を立てる以上自然への影響は避けられないであろう。ここでは自然界へのダメージをなるべく少なくする方法を考えてみた。

 

2 動物の移動経路の確保

 

    問題

道路は線的に連続な為、改変量が小さくとも動物の生活行動圏を縮小させることがある。動物類の移動経路は水辺と樹林地を結ぶ、等高線に直行する方向の動きである。だが、一般に道路は等高線に沿う方向のため、動物の移動が道路により妨げられる可能性が高い。

 

    対策

付替道路が小動物の移動を阻害しないよう、また、小動物が排水側溝に落下しても自力で脱出できるよう措置を図る。

動物の移動経路を確保するために、移動路を設置する。これらの方法として以下のようなものがあげられる。

細部の仕上げと施行を確実に行ない、工事中には自然環境へ十分に配慮し、野生動物等の出現状況に注意する。

@ ボックスカルバートの設置

     新設道路が水路や小道と立体交差するときに設置される箱型地下道(ボックスカルバート)は、人のみならず中型ほ乳類の移動によく利用される。移転予定地ではキャンパス内に道路が建造されタヌキなどの中型動物の獣道が分断される場合に用いるのが有効と思われる。

地下道の設置状況

ボックスカルパートに関しては以下のような点が上げられる

    盛土区間に置いて設置する。

    獣道を調査しそれに沿って設置する。

    路面、出入り口付近は、舗装でなく土壌等を用いた自然の仕上げとすることが望ましい。

    出入り口上部は覆土して植栽を行う。

    盛土区間で道路下部に横断移動路を設置する場合はイノシシやシマリスに対しては、直径2,5mを確保する。

A パイプカルバートの設置

 新設された道路が生息域を分断し、ロードキルが発生する可能性がある場合、道路の下に横断管(小動物移動のための小規模なトンネル)を埋設し、道路の反対側へ移動できるようにする。移転予定地では水辺に近いところや、小型の動物を考慮した移動経路確保に用いることができると思われる。

パイプカルパートに関しては以下のような点があげられる

    盛土区間で小動物のために設置する。

    獣道を調査しそれに沿って設置する。

    水を好まない動物のためには、底部に土壌や落葉を入れ、歩行用の棚を設ける。

     出入り口部分には、誘導や姿を隠すための植栽を行う。

参考 動物が移動に使う道路構造物

道路構造物

種類

ボックスカルバート

ボックスカルバート内の側溝

パイプカルバート

橋梁

タヌキ

ノウサギ

イタチ

キツネ

イノシシ

サル

リス

 

 

 

 

 

 

 

◎=良く移動している、○=移動している、△=あまり移動していない

 

 

 

3 動物の進入防止のための配慮

 

    問題

動物と車の衝突事故においては、動物の習慣性が関係しており、それを以下に示す。

1.                            通常期の生活行動における道路横断

2.                            繁殖期および産卵期における道路横断

3.                            分散行動にともなう道路横断

4.                            道路上の轢死体に誘引されることによる道路横断

 

    対策

@ フェンスの設置

イノシシ、タヌキ、ノウサギ等の中型ほ乳類に対しては、フェンスが1,5m程度の高さあれば侵入を防止できる。しかし、地面を掘り返して潜り込むことがあるため、下部のフェンスと地面とのすき間は5cm以下とするか、接地面をコンクリート化することが望ましい。また、有刺鉄線型や格子網方のものより金網型フェンスの方が効果が高い。また、よじ登る習性のある種については、立格子型のものが効果的である。

リス類やイタチ、カメ類、カエル類等の小動物に対しては、他の動物を対象とした侵入防止柵の下部に返しのついた細かい網や板等を用いることが適切である。また、U字溝を設置することでさらに侵入を防止することができる。

リス類やイタチ等の小型ほ乳類に対しては、金網より細かいメッシュを採用し、途中に直径50mm以上の塩ビパイプの返しを2本以上つけて、よじ登れないようにする。

カメ類やカエル類等の場合には、網目は30mm以下で、上部に直径30mm以上の塩ビのパイプで返しをつけて、よじ登れないようにする。高さは、ともに50cm以上が望ましい。

 

設置図

 

4 周辺の動物のための他の対策

 

@ 側溝への切り欠きの設置

 U字型排水側溝に幅20cm程度の切り欠きを入れ、側溝に落下した小動物が自力で脱出できるようにする。切り欠きは50m間隔で、なお、脱出した後ロードキルに遭わないよう、切り欠きは車道の反対側に設ける。移転予定地での道路わきの側溝、特に木の多い場所や池の周辺を通る道路にもちいて小動物のための対策をするのがよい。

 
切り欠きの設置状況

 

 

側溝に関しては以下のような点があげられる

    蓋かけをして、落下しないようにする。

    設置場所は、池沼、水田等の水辺や樹林に接する区間とする。

A 緩傾斜側溝の設置

  掘削法面の小段に設置する排水側溝には、緩傾斜型の側溝を用い、小動物が落下した場合にも簡単にはい上がれるようにする。切り欠き側溝同様水辺近くの道路に設置するのがよい。

    
緩傾斜側溝の設置状況

 

傾斜側溝に関しては以下のような点があげられる

 

    脱出できるように、側壁がゆるい構造になったものを設置する。ただし、道路側は急勾配にして、這い上がれないようにする。

 

補足:ドライバーに対する標識の設置も効果的である。設置場所は衝突の危険性のある区間に正確に設置する。常に正確な情報を提供し、信頼できる表示を行う。

 

5 まとめ

 

20世紀は工業化と都市化が人と自然の関係をゆがめた。道路の建設が原因の一つになっている。地上ではヒト以外の生きものも移動のための道をもっている。生きものの道は長く使われるものであり、人の道路と比較して進化しない。人と生きものの関係は長期的に考えておかなければならない。道路の建設によって生きものの生息地が分断された場合、その影響が現れるのはずっと後であるからだ。

九大移転地内に造成される道路においても、自然との調和を目標とし、生物多様性をできうる限り保存していきたい。しかし、生き物の生態や生態系は地域差が大きく、実際の適用に当たっては何より地域ごとの検討・工夫が必要と考えられる。自然環境を自然な形で保全できるようにする必要がある。植生を保存するため取り組まれた様々な計画・技術の手法が九大移転する上での計画の一部に用いられることを望む。